ママチャリ8段変速化(SHIMANO 内装8段 インター8) 改造:2007-10-11〜2007/10/22

ママチャリに変速機を付けます。坂道はほとんど無いので、重い方のギヤがほしいのです。


取り付けるのはSHIMANOのインター8。この中に遊星ギヤがぎっしり詰まっていて変速をする仕組みになっています。ずしりと重い1657g。取り付けるときに問題になるのがハブの幅。大きく横に張り出しているネジの長さではなく、自転車のフレームが嵌るところの幅。左側の六角ナットと右側のロックナットまでの幅のこと。ママチャリはこの幅が120mmなのだが、このインター8というやつは132mmある。フレームを12mmほど広げてしまうか、ハブのナットを薄くスライスしてしまうかどちらかの方法をとることになる。とりあえずフレームの固さを確認してから方法を決めることにする。ローラーブレーキの幅も考えないといけない。


買った物はこれ。本体、変速レバー、変速レバーと本体を接続する小物金具。まだスプロケットは届いていない。送料込みで¥16500程度。スポークの長さが合わなければ追加でスポークとニップルが必要になる。安いママチャリが1台買えてしまう。スポークを入れたら1台ではなく2台買えてしまう。この製品はヨーロッパをターゲットしている製品らしい。ママチャリ文化が根付いてしまった日本には、こういう変速機は必要ないのだろう。狭い国土。使い捨ての安い中国製自転車。ちょっと無理すれば買える電動自転車。外装ギヤ(錆びるだけだよ!!)をありがたがるメカ音痴な人々。これが普及しない理由はたくさんある。

SG−8R25VS。VSはたぶんVブレーキ用の意味。寸法は同じだが重量が違うSG−8R20というのがある。ハブフランジの右内側に赤い線が入っているが、重いやつは、この赤い線が入っていないようだ。これがないと外側からは見分けが付かないためだと思う。材質の違いではなくハブシェルの内側の肉抜きとかが違うのではないだろうか。約¥13000。


変速レバーSL−8S20。これは約¥1000と安い。

変速機のビニール袋にはもう一つラベルが貼ってある。バーコードがある方が正式な型番だと思う。


これも安くて約¥600。この3点はBe.BIKEで購入。Yahooと楽天の両方に出店している。YahooのIDを持っているのでYahooで購入。


本体の両側。右はスプロケットを取り付けるための切り欠きと変速レバーを取り付けるための機構がある。これはリムブレーキ用のモデルなので左にはカバーが付いている。これを取ればローラーブレーキを取り付けるためのギザギザが現れるはずだ。


スプロケットも到着。歯数は16。これが一番歯数が少ない。歯数を大きくすると前ギヤを変更しないといけなくなり大改造になってしまう。購入先はサイクルショップナンバーワン。SHIMANOの補修パーツが選択方式で購入できるので便利。こういったマイナーパーツは一般の自転車店で注文しようとすると店員に説明するのがひどく大変。店員が解ってくれたのかどうかが解らないので現物を見るまで不安だが、インターネットなら問題なし。これは約¥700。


今付いているのは、歯数14だ。スポークはものすごく太いが、ニップルの外側のサイズは普通の国産用。材質が同じなら相対的にニップルが薄く弱くなっているということだ。


ドイツ語だが分解方法解説のPDFファイルもある。販売店向けだろうか?SHIMANOのホームページには見つからない。この説明書は Inter-8-Nabe.pdf というファイル名。検索エンジンで検索すればヒットする。


スポークを除く現物がそろったので、スポーク長を計算。ドイツ語の説明書にサイズが載っていたが、一応実測して確認した。ハブのフランジは左右対称ではなく、外装ギヤ同様左に寄っている。但し、2.7mmと僅かなので、左右のスポーク長は同じでよさそう。


こちらは現在の物。実際のフレーム幅は124mmだった。フランジがちょっと小さい。シングルギヤなのでハブのフランジ位置は左右対称。


..で計算結果。左はインター8で右が今の物。スポークの長さの違いを確認するためなので、まだリムの径は正確に計測していない。結果3.5mm差。たぶんスポークを交換しないとダメ。Flange distanceはハブのセンターからフランジまでの距離のことです。


軸は面取りしてあるので、軸をバイスに銜えてブレーキカバーを外す。カバーを固定するナットはかなりきつく締まっているのでバイスがないとつらいかも。カタログスペックの1550gというのは、この状態の物かと思ったが違った。これでも1631gある。中にギヤが入っているので内部はたぶん油まみれだ、体脂肪率がかなり高そうなので、カタログスペックは乾燥重量に違いない。そんなの有りか?


白いグリース?を拭き取るとギザギザ出現。これがローラーブレーキと嵌合する。


変速機付きモデルもあるので変速ワイヤーを通すガイドは自転車に標準で付いている。


スポークを1本だけ外してみた。ネジの部分は若干細くなっている。ニップルの頭にスポークが出ていないので、もう少しねじ込めそうだが、さすがに3.5mmは無理。ニップルの頭からスポークが飛び出すほどねじ込むことは出来ない。錆びなかったので材質はステンレス。ニップルは真鍮。


スポークの長さ自体はハブが変わっても問題なさそう。標準のニップルはちょっと長めなので、短いニップルが入手できればスポークはそのままでニップルだけの変更で済んでしまいそうだ。手持ちのニップルをスポークにねじ込んでみようとしても入らないので、たぶんサイズが13番。手持ちのものは15番と14番のみなので入らなくて当然。スポークの値段を調べると1本¥30しかしないので、購入してしまうことにする。


スポークを購入するため正確にリムの径を計測。計測するのはリムの外形ではなくERD。ERDというのはこのページの真ん中よりちょっと上に書いたとおりで定規を当てて簡単に計測できない。今回は...
 A:リムの一番外側の径
 B:リムの外側からニップルの頭までの距離
 C:ニップルの溝の深さ
 ERD=A−B×2−C×2
で求めることにする。実測すると...
 A:604mm
 B:10.19mm
 C:0.6mm
となったのでERDは 604−10.19*2−0.6−2 = 582.42mm となった。上の方でスポークカリキュレータに入れた目分量で測った値とほぼ一致した。これは偶然。スポークの長さをついでに実測してみたが272mm。本来この自転車の正しいスポークの長さは274mmなので、2mmほど短いスポークが使われていることになる。ニップルが普通のものより2mmも長いのでこの長さで適当だったわけだ。



再度、精度良く計算。左右共に271mmが最適な長さとなった。


重いと言われていますが本当に重いのか比べてみました。外装変速機なら
 後ハブ
 後変速機
 後ギヤ
の3点セットがインター8に相当します。10万円ちょうどくらいの自転車に付いているシマノDEOREだと
 後ハブ  450g 約¥2600
 後変速機 316g 約¥4000
 後ギヤ  358g 約¥3000
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     1124g 約¥9600
やはり、インター8のほうが重い、高い という結果になりました。室内保管できるならインター8より外装変速機の方が重量面でも価格面でも有利です。

スポークも届きました。1本¥50のバテットスポークを買いました。ママチャリには贅沢品です。36本で¥1800。購入場所はタキザワ。スイスDTのバテットスポークは徐々に細くなっています。ちょうど右の写真のニップルのあたりから徐々に細くなっています。太さの差は0.2mmなので写真だとよくわかりません。


めいっぱいねじ込んだ状態です。ぴったりの長さの状態から更に2mmねじ込めます。ダブルウォールのリムなら問題ありませんが、ママチャリはニップルとチューブが直接接触してしまうシングルウォールなので+1mmが長さの限度です。今回購入したスポークの長さは271mmですが、272mmまではOK。273mmでは長すぎということになります。また、271mmより2mm以上短いとスポークのネジ部がニップルの上から見えてしまいます。ママチャリなら強度的にはたぶん問題ありませんが格好悪くなります。ダブルウォールのリムというのは右の写真のようなリム。金色のハトメが入っているが、無いものもある。2階建てになっていて1階の部分にニップルが収まり2階の部分にタイヤが乗る構造なので、チューブとニップルは接触しない。この写真の物はチューブラータイヤ用なのでタイヤを引っかけるリムの縁が無い。


グリップは今付いている物を切ってもいいが、¥500と安いのでグリップシフト用の右が短いタイプの物を購入。OGKのエルゴグリップ。


ナットを回そうと思ったら15mmとものすごく半端。14mmの次は17mmにするのがお約束になっていて、15,16mmは基本的に使わない。右の写真のタイプのスタンドがあると整備するとき便利。


チェーン引きは内側に付いてる。


ちょっと固定しているナットが固かったが、ローラーブレーキを外したところ。このブレーキはそのまま使用可能。放熱フィンの付いた物もあるがママチャリには不要。長い下りでもない限りフィンが必要なほど発熱しない。


薄く頼りないエンド。幅は128mmある。


セットしてみた。ちょっと押し広げなければならないが問題ないレベル。


後輪をばらす。


あっという間に完成。面倒なので振れ取りもいい加減。0.3mm程度振れているが、そんなの走っていて解らない。たとえ縦振れが1.5mmあっても、判る人はほとんどいない。


後ギヤを固定するスナップリング。目玉が付いていないので取り付けが大変。ドライバーでこじって強引に装着した。これはアルミの角棒を挟んでいるところだが、これだけ押し広げるのはとても大変。


チェーン引きを外側に出そうとしたが、こうすると回り止めが入らない。


後輪組み付け完了。...と思ったがスタンドを取り付け忘れていた。一つのネジに何でもかんでも取り付ける方式なので忘れ物をするととにかく面倒。ここまでくるのが実は長かった。チェーンをかけ忘れたり、チェーン引きを逆さまに入れたり。


スタンドを付けたら、今度は回り止めが入らない。左側の回り止めは省略した。


グリップは再利用しないので切開して外す。ハンドルが短くて、ブレーキがハンドルバーの曲がっている部分にくるので、レバーが変な方向を向いてしまう。ブレーキレバー付きは高いので止めたが、レバー付きを買うべきだった。


取り付け完了。特にハの字に開いているようには見えない。


走ってみたが、とても微妙。ギヤ比の差がトータル300%もあって、1段あたりの変化が激しい。MTBと同じくらいのギヤ比なのでロードバイクに乗り慣れた人にはちょっと変化が激しすぎる。ノーマルのギヤ比はとても絶妙であったが、リアスプロケットの歯数が変わってしまったので同じ重さのギヤが無くなってしまった。大体6段と同じくらいなのだが6段の方がちょっと重い。変速機を付けても自転車そのものの走行抵抗が変わらないので効率よく走れるようになったという感触があまりない。タイヤを変えない限り激変は望めそうにない。


かかった費用をまとめてみよう。送料、通販の振り込み手数料は含まれていないので実際はもう少しかかる。変速グリップはハンドル+ブレーキの組み合わせと相性が悪く失敗だったので、レバー付きを買うと¥2000ほど余計にかかる。トータル約2万円ってことになる。もちろん工具類は含まれていない。ホームセンターに15mmのソケットレンチを買いに行く時間も含めてトータル6時間かかった。スポーク長の計算など事前準備は含まない時間でだ。自転車屋に頼んだらかなり手間賃取られるに違いない。

品名 型番 購入先 価格
インター8本体 SG−8R25VS Be.BIKE \13,209
変速グリップ SL−8S20 Be.BIKE \1,023
カセットジョイント SM−8R20 Be.BIKE \632
スプロケット16T Y32203220 サイクルショップナンバーワン \679
スポーク DTコンペティション 2.0×1.8バテット 271mm タキザワ \1,800
グリップ OGK AG−016エルゴグリップ サイクルベースあさひ \472
合計 \17,815


いじってみるとインター8の駄目なところも見えてくる。パンクしたときに外装変速機なら後ホイールを取り外してチューブ交換できるが、インター8はナットで固定する方式なのでホイールを簡単に取り外せない。15mmのレンチを携帯すればよいという問題ではない。面倒くささが全然違うし、まず間違いなくチェーンを触ることになる。しかもハブに変速ワイヤーがくっついているので自転車とホイールを完全に分離したいならワイヤーをはずさないといけなくなる。ワイヤーは固定されているのではなくカセットジョイントに嵌っているだけなので外すのは簡単だが、外装変速機ならやらなくてもいい。ローラーブレーキを使用しているとトルクロッド(トルクロッドと呼んでいいのか知らないが、フレームとブレーキを固定する金具のこと)を外すのが厄介だ。内装ギヤとローラーブレーキの組み合わせはメンテナンスフリーになるのが良いところだが逆にパンク修理が面倒になる。パンク回数が多いとトータルのメンテナンスの手間が増えてしまう。

時々ギヤがかみ合わずクランク1/4回転分程度空転する。調整は4速にしたときに黄色いあわせマークが一致するように設定する。インター3よりは簡単。でも、たまにギヤ抜けが起こる。ハブ側のリターンスプリングが弱いので毎回同じ位置に戻っていないような気がする。ワイヤーを抜いてテフロン系の油を注せば良さそうだが、面倒なのでしばらくこのままで使用することにする。


ブレーキが変な方向を向いてしまうのでハンドルを交換。厚肉で重い。


ハンドルを変えるとワイヤーの長さを変更する必要がある。右は切り詰めたワイヤー。ママチャリっぽく無くなってしまった。横幅は変わらないのだが、ハンドルの形状のため幅広になった感じがする。


ワイヤーのなじみが出たのだろうか、ギヤ抜けはなくなった。

約半年乗ってみての評価:
 ・停車時に変速が出来るのは良いが、負荷がかかっているときは逆に変速が出来ない。
  軽くペダルを回しているときは問題なく変速するが、踏み込んでいるときに変速すると、踏力が抜けた瞬間にいきなり変速する。
  無音ならまだいいのだが、いきなり変速するときはかなり大きな音がする。通常の変速時には変速音はしない。(グリップを回すときの音は出ます)
  外装ギヤと逆の変速タイミングなので外装ギヤの自転車にも乗る人はちょっと慣れが必要。
 ・雨ざらしでも錆びない。(分解して中のギヤの錆を確認してみたわけではありません)
 ・変速は外装グリップシフトのSRAMより弱い力で変速できる。シフト時の音(グリップを回したときの音)もSRAMより小さい。
 ・時々ギヤ抜けが起きる。負荷の問題かグリップを無意識に回してしまっているのか不明。
 ・空転時のラチェットの音は静かでよい。
 ・バックさせると変な音が出る。(もちろん駐輪場内でのほんの数メートルの距離を)
 ・インター3はペダルを回しているときにもラチェット音のような物がするがインター8は無音。


2008-11-16追記
後輪がパンクしたので古くなったタイヤもついでに交換しました。色々な物を外さないといけないので1時間以上かかってしまいます。