2024-12-27
JANOME780DX。購入価格¥83025。楽天のポイントが約¥9000付いたので実質¥74000。ポイント内訳はスーパーポイントアップ得点¥3621、お買い物通常ポイント¥5297で前者は楽天で何を契約しているのかによって異なるため誰でも同じだけポイントが付くわけでは無い。商品ページを開くまでその商品にいくらのクーポンや割引があるのかわからないので面倒でも一覧で価格を比べるのではなく商品ページを開いてみるべき
職業用ミシンのメーカーは日本に3社しかない。JUKI、JANOME、brother。babylockやSINGERはJANOMEのOEM。特にJANOMEは販売チャネルによって微妙に仕様が違う似たような機種を販売していてわかりにくい。主要な機械的構造は全機種同じ。これは他のメーカーも同様でハイエンドからローエンドまで主要な構造は全部共通部品で価格の違いは製造コストの反映では無く販売戦略によるものの影響が大きいと思われる。メーカーが3社でそれぞれ1機種なので職業用ミシンは3機種しか存在しない。この3機種にいくつかの機能を付加したモデルが存在する
職業用ミシンは構造がシンプルでこれを修理できない修理業者は存在しないので安売りしているネットショップで購入するのが良い。修理して使い続けるのが前提の機械なので販売店の寿命よりミシンの寿命の方が長い。バイクや自動車のように修理するより買い替えたほうが安上がりになる分岐点はほぼ存在しない。湿った押し入れに入れっぱなしで錆びだらけにしたり部品の供給が止まらない限り直せる。修理不能になる可能性のある部品の中でもっとも先に供給が止まる物は電子回路。自動糸切機能の起動やモーターの調速は電子回路で行っているため電子回路基板が無くなれば修理不能となる。電子回路設計技術があれば基板の修理は可能であるが30年以上前の機種でも弱電部分はマイコン制御なのでこのICが壊れると回路基板修理は不能になる。電源回路や強電回路は弱電回路より壊れやすいが手堅い悪く言うと古めかしい安定性を重視した設計になっている
フットコントローラーは10mm(一番高いところを)程度踏み込まないと動き始めない。JUKIのSPUR90のほうがリニアに回転数と踏み込み量が一致する感じ。このコントローラーは踏み込み量が大きく初心者向きのような気がする。踵が浮くまで踏み込まないとフルスロットルにならない。素早く足を離すとコントローラーが跳ねる。バネが強すぎるのが原因。重いものに両面テープで張り付けてしまう等の対策はとれる。JUKIとの違いを一番感じたのはここと重さ。JUKIより一回り大きく重い
フットコントローラーは操作性に大きく影響を与える物なのでユーザーによる設定変更が出来るようにすべきと思う。最高回転数、動き始めのペダル位置、踏み込み量とモーター回転数の関係(直線、
二次曲線)など変更したいと思うユーザーは多いはず。機械的な反発力の強さ、踏み込み量、高さ等ユーザーの体格によって変わる要素もある
糸通し機能は付いてないので手芸用の糸通しを使う。1個¥100程度。中国製なら10個¥100。針穴にひし形に曲げた針金を差し込んでその中に糸を通し引き抜けば良い。何十年も前からある便利道具
穴に糸を通す必要があるので糸の交換は面倒。JUKIのSPUR90は穴に通すのは針だけ。現在のJUKIの最新機種もこの機種と同じ方式になっているためSPUR90より糸の交換は面倒。頻繁に糸を交換する場合は糸を切り新しい糸を古い糸に結び付けて交換してしまうのでこの方式に改悪されてしまった物だと思う
これはステッカーではなく印刷
ここも同様
JUKIと違ってここはねじ止め。電球の交換をする時以外開ける必要は無い
中はこんな感じ。JUKIより大きいので広くゆったり部品が入っている感じ
電球は12V5W。W5Wという規格。ウェッジランプやウェッジバルブと呼ばれていたりする。バイクのポジションランプなどに使われる球でLEDの物もある。ねじ込み式では無く差し込んであるだけなので引っ張れば外せる
返し縫レバーは金属製でプラスチックでそれを覆っている。JUKIは全部プラスチックなので経年で折れることがある。それ以外のプラスチック使用箇所はJUKIと大体同じ。小物入れは3Dプリンターで作って両面テープで貼り付けてある
JUKIと違って主軸にボールベアリングを使用しているので下側には注油口が無い。多少のゴミは溜まるし全く注油しないわけにもいかない。ミシンに限らず機械のメンテナンスは機能が分からなくても見ることが重要。時々見ていれば異変に気付く。見ても解らないからという理由で見ることを放棄された機械の寿命はとても短い
自動糸切機能の刃物付近の部品はJUKIとそっくりで同じ部品を使っているような気がする。それ以外の部分は仕組みは同じであるが形状は異なる
ボールベアリングは釜の近くと
ここ。注油不要なシールドベアリング。若干ピントがぼけている白いカムが糸切カムでJUKI同様14~15年で割れると思う
全部がボールベアリングでは無いので1年に1回は注油したほうが良さそう。ゴム足のネジを4本外せはこの状態になる。上側に注油してもそれが下側に流れる経路は無さそう。この状態で
タイミングベルト
ソレノイドの電極付近(一番右にある中央の円柱形の大きなもの)
写真右下のコンデンサ
糸切カム
に油を付けないように注意しつつ動く部分に注油が必要。自動糸切機能を動作させないと動かない部品があるので糸切ボタンを押して動く個所にも要注油。糸切機能は通電状態でなくても動かせるがどのように動くのかは通電状態で動かしてみないと分からない。糸切カムは潤滑が必要な部品であるが樹脂なので専用のグリース(普通はシリコングリス)を使用する必要がある。通常の潤滑油を使うと割れる。職業用ミシンは見た目をよくするための工夫よりメンテナンス性を優先した造りになっているので分解整備は家庭用ミシンより容易。昔の足踏みミシンからの正常進化系は家庭用ミシンでは無く職業用ミシン
メンテナンスが必要な機械であるにもかかわらず説明書にはその記述は少ない。下糸ボビンの巻取り量の調節方法、電球の規格(交換方法は書いてある)、プリテンションの基本的な使い方等々記載も無くどうせ説明しても解らないだろうという感じの説明書になっている。JUKIもこれについては同様で非常に薄っぺらい
JUKI SPUR90の構造。必要以上に注油すると飛び散った油で全体が潤滑されると思う。最小限の注油だと潤滑されるのは中央の釜が付いているシャフトだけ。大量に注油してしまうと横倒しにしたときに余った油が流れ出てくるため結局底蓋を開けて掃除をすることになる
JUKI SPUR90の構造。修理記録についてはここを参照。購入してから30年以上が経過しているがまだ寿命が見えてこない
2024-12-27
上蓋も開けてみた。上側の動力軸もボールベアリングが使われている
フォトインタラプタは2つ使われている。こちら側もボールベアリングが使用されている。下側と合わせて全部で5か所
配線はJUKIのSPUR90より混雑している。使われていないコネクターやジャンパーピン等がある。基板の診断機能やプログラム書き込み用だろうか?面倒なので基板の保護カバーは開けなかった。大きな電界コンデンサやトランスがあるのでスイッチング電源ではなく家電ではほぼ絶滅したリニアレギュレータ。信頼性安定性重視設計
下糸巻き機構は完全に独立した構造になっている。JUKIはクラッチ機構等を経由して主モーターから動力を得ている
2025-01-08
膝プロテクターのストラップが寿命なので付け直した
オリジナルは縁の内側に巻き込むように縫ってあったがゴムベルトの寿命は数年しか無いので取り外しやすいように上からそのまま縫い付けた。抑えが上がる高さの6mmまでの範囲なら帆布などの硬い布も縫える。SPUR90よりトルクは大きいと思う
段差が大きい物は乗り越えやすいようにこんなものを使う。Temuで¥730。ソリが前後で2分割されていて別々に動く。前側は反りが大きく段差を乗り越えやすいようになっている。構造がシンプルなファスナー用などは1個¥100もしない。大抵は4~5個のセット品になっている。精度は純正品よりかなり劣るがコストパフォーマンスは良い
モーターカバーも取り外してみた。モーターはYDKのYM-63D。JUKIのSPURシリーズと同じもののようなので出力はほぼ同じはず。但し流す電流が異なると出力は変化するのでモーターが同じだからと言って出力が同じとは限らない。モーター駆動回路をどのように設計したのかによって変わる。もちろんギヤ比でもトルクは変わる。モーターの下にあるのは電子回路用のトランスだと思う
モーターの電線は3本あるが3相ブラシレスではない。AC100V電動工具と同じ普通の整流子モーター。大きさの割に大きなトルクが出せるのが特徴
モーターカバーとプーリー側カバーは小さな爪で嵌合しているので両方同時に取り外したほうが良い。無理に外そうとすると爪が折れる。それぞれのカバーは本体にネジ3本で固定されているので折れても問題無い。10年後に取り外したら経年劣化でほぼ確実に折れるだろう。元に戻すときはモーターカバーを先にねじ止めしてからプーリー側カバーを叩き込む
2025-01-09
釣り糸で帆布を縫ってみた。帆布は厚さ1.2mmを2枚重ね。針は#16。このミシンの上限は#18。針は数値が大きいほうが太い。#18は扱っている販売店が少なくまだ入手出来ていない。一般的に入手しやすい針の太さは#16まで。#18以上は特殊
釣り糸が何メートル出ているか分かるように10m毎に違う色で染めてある。単色もあるがミシン糸より色数は少ない。普通の糸は撚ってあるだけだがPEラインは編んであるので糸では無く紐に近い感触。モーターに負担がかかり過ぎていると思う。下糸をボビンに巻ける距離が非常に短い。6号は#16針の穴に入らない。4号が限界。4号でもノギスで挟んだ実測が0.31mmあるので直径はもっと大きい。ミシン糸なら8番手までは縫えるはず。ミシン糸は数値が小さいほど太く釣り糸とは逆。ジーンズの糸が8番手。普通の細いミシン糸は60番
2025-01-15
太糸用の針が届いた。DBx1++はDBx1の改良版で完全互換同価格品のようなので++の方にランニングチェンジされていくと思う。DBx1は#18以上の太さの物もあるが#19以上はシャンク径が太く職業用ミシンでは使えない。職業用ミシンで太い糸を使いたいときはDBxA20を使う。これはは太い針でもシャンク径が細い。工業用ミシンは針の種類がとても多いが職業用ミシンで使えるのはシャンク径が1.62mmで針の上端から針穴までの距離が33.8mmの物。販売されているすべての工業用針が使えるわけでは無い
上から#16,#18,#20
1.2mm厚の帆布を6枚重ねて縫ってみた。針はDBxA20 #20。低速では限界に近い負荷がかかっているような気がする。針の動きも帆布の摩擦でかなり遅くなる
糸はこれ。フジックスのキングスパン8番。スパンというのは短い繊維をより合わせた糸で毛羽立っていて綿糸のような質感の糸。上の写真の右隣りはジーンズステッチ20番。糸の番手は同じ重量当たりの長さを表す。つまり糸の断面積の逆数で8番は20番の8/20=2.5倍の断面積があり強度が2.5倍という事になる。糸の直径はその平方根なので√2.5=1.58倍
下糸の糸調子(=糸の張力)はボビンケースのネジを回す以外に方法は無いので糸の太さ毎にボビンケースを買ったほうが良い。左のネジはボビンケースの板ばねの固定用で右側のネジを締めこむと糸の張力は強く、緩めると弱くなる。糸はボビンケースの外側と板ばねの間に挟まっているので板バネで糸を強く挟むと縫い張力が強くなるという単純な仕組み。ボビンケースは1個約¥700。純正品は高価なので互換性のある物を購入する。自動車産業同様ミシンも部品メーカが存在し釜やボビンケースはミシンメーカとは違う専門メーカーが作っている。ボビンケースには部品メーカーの刻印がある。JANOMEのこの機種の純正品はTOWA。フットコントローラーもミシンメーカー名が何処にも書いてないのでたぶん部品メーカーの既製品。この写真のアルミボビンは1個¥20の中国製
2025-01-16
布送りは下側だけにあるので上側の布が送られる力は下の布との摩擦力に依存している。上から押さえられているので上側の布はそこに留まろうとする力が働いて上下の布に縫いずれが起こる。このローラーを使えば改善されるはずなのだがあまり変わらない感じ
Temuで¥767だった。製造上のバリがあって斜めに取り付くのでやすりで削った。矢印の部分。ひどく固くてやすりが食いつかない
2025-01-17
皮革用の針DBxF17。1.62mmシャンクは#18までのサイズしかない。#19はシャンク径が2mmなのでこのミシンには使えない。他の革用の針も#19より太いものはシャンク径が2mm。オルガン針のカタログを見るとDBxF42が#22まであるがナイフ形状が縫い目の進行方向に対して45度の角度になっているので縫い目も斜めになる
先端形状はナイフのようになっている。8番手の糸は問題無く使えるが針穴の大きさに対してやや太すぎる感じ。通常針の穴は糸2本が余裕で通る大きさがあるがこの組み合わせだと手芸用の糸通しを使う時引っ掛かりを感じる。糸通しは糸2本と糸通しの針金2本が同時に針穴を通る瞬間がある。その時抵抗が大きくなり引っ掛かりを感じる
厚さ1.3mmの牛革。白糸が2枚重ね。茶糸は最初2枚で途中から4枚重ね。ミシン側の上糸調子は最大の8。上糸下糸共に強すぎる感じなので上下とも糸調子は少し緩めたほうが良い。切りながら縫っていくので普通の針より抵抗は少ない気がする。合成皮革は裂けるので普通の針で縫ったほうが良いらしい。サドルレザーのように分厚いものは0番手の太い糸で手縫いした方が見た目も強度も向上する。革の場合糸8番手、針#18がこのミシンの上限。ミシンで縫える太さの限界は
・針の太さ
・釜の設計
・ミシンのモーターの出力
・ミシンの組み立て調整
に依存する。糸は内釜とその回り止めの隙間を通るがこの隙間はミシンの組み立て時に決まる。もちろんミシンの修理時に釜を取り付け直しても隙間は変わる。隙間をゼロにすれば縫えなくなるがそのように組み立ててしまう事も出来るくらいミシンの組み立て調整範囲は大きい