自作電気柵で使用される部品

電気柵で使用される部品の基礎知識

自動車やバイクの点火装置を流用した自作電気柵に使われる部品の解説

・点火装置を流用した電気柵は市販の電気柵より威力がありません
 エンジンの点火に必要なエネルギー量は 20ミリジュール程度です
 一方市販の電気柵は弱いものでも200ミリジュールと10倍の威力があります
 牧場で使われる家畜の逃亡防止用は3000~4000ミリジュールとさらに強力です
・柵線は電気柵装置から見ると負荷になります
 電極同士は絶縁され動物がそれに振れない限り電気は流れないように思えますが電線の抵抗値はゼロでもなく静電容量もあるので電力を消費します
 柵線が長くなるほど強力な電気柵装置が必要になりますが逆に狭い範囲を囲うだけなら威力の小さな電気柵装置でも十分です
 農家の自家消費用や規模の大きい家庭菜園に高価な市販電気柵は無駄です
・高威力が必要なときはバイク用のCDIを使用した方式のほうがコンデンサを増設することで威力を上げられるので適している 自動車用はあまり出力を大きく出来ません


2023-12-16

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 イグニッションコイル
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これはトヨタプリウスのイグニッションコイル。中国のネットショッピングサイトで売っている。1本¥2000程度
イグニッションコイルは4気筒エンジンの場合4本同時に交換することが多いのでセット販売が多い
純正品とCOPY品が出回っている互換品にはDENSOの社名が成形されているが互換品には無い
社名が有っても純正品であるのかはわからない
電気柵は自動車エンジンのような高性能は要求されないのでどちらでも良い

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部品番号 90919-02240 の端子はこのようになっている
・イグニッションコイルの仕様はメーカー、車種等により異なり仕様は公開されていないため
 電気柵として使用できるか否かは実験してみるまで分からない
・電源+、電源- 間に12~15Vの電圧をかける
 自動車の場合エンジンがかかっていないときはバッテリー電圧の12.8V エンジンが回っている時は発電機の電圧14.5Vになる
 端子が3つ以上ある場合は内部に電子回路が入っているため電源端子に常時電圧をかけたままにしておく
・点火信号に5Vの電圧をかけると(電源-<->点火信号端子間を5Vにするという意味)コイルに電流が流れ鉄心が磁化され磁力としてエネルギーが蓄えられる
 その後点火信号を0Vにするとコイルに流れる電流が切れ磁力として蓄えられたエネルギーは逃げ場を求めてコイルに電流を流すが
 コイルは何処にもつながっていないので一番距離の短いスパークプラグの所で放電しエネルギーを失う

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HYUNDAIのイグニッションコイル。部品番号 27301-2B010 上の物より安い
同様に中国のネットショッピングサイトで売っている

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恐らく極性はこの通りだが構造上逆接しても動く

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内部は2つのコイルの片側を結線した構造になっている。巻き数の少ないほうに電気を流してから切ると巻き数の大きいほうに高電圧が発生する。電気を流す時間は数ミリ秒が限界で長時間流すと過電流が流れてコイルが焼き切れる。コイルの鉄心が電力を磁力に変換しながら蓄積している間は過電流は流れないが蓄えられる磁力の上限に達すると過電流が流れ破壊に至る

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バイク用のイグニッションコイル 125ccGY6用
構造は上記の物と同じであるがコイルの巻き数が異なっているため12V電源では電圧が足りない。約200Vの電圧をかける必要がある
これを使用するためには12Vの電圧を200Vに昇圧するCDIという回路が必要になる
コイルの価格は上の2つの自動車用イグニッションコイルよりかなり安いがCDIが別途必要になるので合計価格は自動車用と大体同じになる
バイクの部品は車名を明記した例えば「CB250用」といったものは高価で汎用品は安価
電気柵は実際の用途とは異なる流用なので安価な汎用品で問題無い

このオレンジ色のイグニッションコイルの実測値
 一次コイル抵抗値:0.35Ω
 一次コイルインダクタンス:44μH
 二次コイル抵抗値:1.76kΩ
 二次コイルインダクタンス:計測できず
 共通端子:付け根が黒いほう こちらをCDIに接続
 付け根が黒いほうを電源マイナスに接続

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 CDI
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中国製のCDI。HONDA互換製品
上のオレンジ色のイグニッションコイルと組み合わせて使用する
主に2つの回路で構成されている
・バッテリー電圧を昇圧して赤いコンデンサに充電する回路 このCDIは180V程度に昇圧される
・ピックアップコイルの信号をトリガーとしてコンデンサに充電した電力をイグニッションコイルに流すスイッチ回路
通常は防水、絶縁のため樹脂て固められているがこれはむき出し
赤いコンデンサに容量の多きいコンデンサを並列接続することで威力を上げることが出来るのがCDIの利点
コンデンサーに蓄えられる以上の電力をコイルに流すことは出来ないので過電流によりイグニッションコイルを破壊することは無くなる
点火方式としては旧式なので古い車両の消滅と共に入手性が悪くなってくることが予想される
もちろん自動車がすべて電動化されればCDIに限らずイグニッションコイルはすべて消滅する

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コンデンサを増設して威力を上げたCDI。追加したコンデンサの容量は元々ついているものと同じなので容量は4倍になる。どれだけ増設しても大丈夫なのかは実験してみるしかない。このCDIは数週間問題無く動作することを確認済み
この写真の状態で柵線の総延長160mに接続すると約6000Vの電圧になる
スイッチング電源を使用する場合は電圧12V電流5A以上にする

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CDIのコネクターピン配置
ピックアップコイルの点火信号、電源マイナス共に2つ端子がある。基板上でつながっているのでどちらを使っても良い

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CDIの点火信号になるピックアップコイルの電圧波形はこのような交流。自動車のイグニッションコイルは0V<->5Vの直流電圧変化で動作するがCDIは交流波形の点火信号を入力しないと動作しません

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 タイマー
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24時間電気柵を動作させるのであれば不要ですが夜間人気のなくなった時のみ現れる動物にはタイマーが使用できます
この中国製のタイマーは安価ですがメカニカルリレーを使用しているため消費電力が大きいのが欠点です
電源は12V、24V、100V、200V用があります
商用電源で使用するときは消費電力を気にする必要はありませんがバッテリーを使う場合は電気柵自体の消費電力よりタイマーの消費電力の方が大きくなってしまうので改造が必要です

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これは100V用。

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このタイマーは見た目が全く同一の異なる仕様の物が存在する
違いはロック機能の有無で矢印の位置にロックマーク(6を逆向きにした文字)が出ている時はスイッチ入力を受け付けない
C/Rキーを連続4回押すとロックは一時的に解除される

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 使い方概要
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・H+とM+を同時に5秒間押し続けると時計の電源を切ることが出来る Cボタンで再起動 時刻、メモリーはリセットされてしまう ロック機能があるモデルだけの機能
・MANUALキーを押すと時刻とは無関係にONすることが出来る
・Pを押すとタイマー設定
  D+ 曜日
  H+ 時刻
  M+ 分
 タイマーメモリーは「いつONするか」が20メモリー、「いつOFFするか」が20メモリー 30メモリーのモデルもある
 Pボタンを押すたびにメモリー番号が増加
 必要なだけのメモリーを設定したら時計ボタンを押して時計表示に戻る
 表示がAUTOになっている時のみタイマーが動作する、ONやOFF表示は強制ON、強制OFFの意味
・時計キーを押してから上記3つのキーを押して時刻設定

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 スイッチング電源
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バッテリーではなく商用電源を使用する場合必要になります
電気柵の消費電力は少ないものの瞬間的に数アンペアの電流が流れるため商用電源を利用する場合容量の大きな電源が必要になる。容量の大きなAC-DCアダプターは高価であるためこのようなケースむき出しの電源装置を利用する。価格は15V3Aで送料込みで¥1500程度。製造国はほぼ100%中国で中国のネットショッピングサイトで購入すると安い。内部の構造はAC-DCアダプターと全く同じスイッチング電源でこれを黒いケースに入れAC100Vのコードと出力ジャックを追加したものが市販のAC-DCアダプターである

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筐体アースは電源の外側の金属ケースに繋がっている。電源の仕様にうるさい音響機器などでは気にするが電気柵では使用しない

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 ソーラーチャージャー
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電気柵は消費電力の小さな装置ですがバッテリーを補充電することなく数カ月使えるほど低消費電力でもありません。バッテリーを使う場合はソーラーチャージャーとソーラーパネルが必要です。どちらも¥1000程度で済みます。バッテリーは¥3000程度です。Amazonでは高価ですがAliexpressやTEMU等の中国のネットショッピングサイトでは安価です

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このような配線になります。多機能なソーラーチャージャーには「日中の充電中は電気柵の電源を切る」といった機能もあります。この機能はタイマーの代用になります

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