一番メカっぽくて機材好きにはたまらない部品です。しかし変速の仕組みはチェーンを無理矢理横にずらしてギヤを掛け替えるというメカ好きには許し難い方法が採用されています。
※厳密には歯車ではないのでギヤというのは変ですが、その辺は柔軟に解釈してください。正しくはスプロケットです。
自分で組み立てる場合は安売りのネットショップで購入します。ショップにより価格差が大きいようです。またハイエンドの物とローエンドの物では価格差が大きいので予算に合わせて購入します。ローエンドの物とハイエンドの物の性能差はあまりなく、違いは重量差であると思ってかまいません。特にフラッグシップモデルは価格も飛び抜けて高く、旧モデルになると直ぐに価値を失う陳腐化の激しい商品です。もしかしたら「高い」−>「利幅が大きい&あまり売れない」−>「アフターサービスで対応できる」−>「品質が低くても大丈夫」という図式になっているかもしれないので、高価なことは品質の証ではないかもしれません。
ブレーキレバー一体型の物と別になっている物があります。一体型はブレーキレバーと変速機レバーの位置関係を変更できません。位置関係が変えられないと不便なの?と聞かれるとちょっと悩みます。手は器用に出来ているので少し位置関係が悪くても直ぐに慣れてしまいます。そんなわけで個人的には一体型でいいと思っています。
■気にしなければならない規格の種類とバリエーション
・シリーズ:
メーカーは実質SHIMANOのみです、価格帯によってシリーズ分けされているので予算に合わせてシリーズを選択します。
通常、変速レバー、前後変速機、前後のギヤ、は同じシリーズにします。ブレーキレーバー一体型のものを選択すればブレーキも同じシリーズになります。
メーカーは同じシリーズの部品を組み合わせて使用することを前提にしているのでシリーズを統一すれば無用な問題を避けられます。
■気にしなくても良い仕様や規格
・適合するハンドルのサイズ:
ハンドルの直径は22mmで統一されているのでハンドル取り付け部の直径を気にする必要はありません。
ブレーキ一体型の変速レバー。これはロードバイクのようにブレーキレバーが変速レバーを兼ねているもの。全部金属のように見えますが強度が必要ない部分はプラスチックを使っています。X構造は見た目だけでなく強さも兼ね備えているというのがXTRの謳い文句ですが実はこの部分プラスチックです。実際にX構造が強度部品になっているのは後変速機だけです。
SHIMANOの独占状態です。安く上げたいときは「DEORE」という製品を選択します。その下のグレードに「ALIVIO」というのがあり、かなり安いのですがリアが8段変速だったりで旧式規格なので避けた方が無難です。市販の完成車は価格差がつくクランクにだけ安物を使うことがあります。完成車を購入するときに「安物パーツでコストダウンしていないか」を判断するときに先ずこのクランクを見ます。
■気にしなければならない規格の種類とバリエーション
・シリーズ:
前ギヤとセットになっているので、変速レバー同様、同じシリーズのもので統一するのが無難です。
・適合するBB(ボトムブラケット)
フレームに固定されるのはボトムブラケットというクランク軸です。
クランクはボトムブラケット経由でフレームに組み付けられるので、クランクに適合するボトムブラケットを購入すればOKです。
同じメーカーの同じシリーズの物を購入すれば悩まずに選択できます。
・長さ:
長さが異なる物が販売されています。購入するときには選択しなければなりません。ロードバイクは170mmが主流ですが、MTBは175mmが多いようです。
同時に乗り比べてみたことはありませんが、身長178cm(足短め)の自分には175mmのクランクは長く不自然に感じました。
長い方が力が入るという理屈でロードバイクより5mm長い物が主流になっているという噂がありますが、漕ぎの重さはギヤで変えられるので、これは屁理屈です。
足の長さによってクランクの長さを変えるのが正しいはずです。
インターネットの検索エンジンで「自転車」「クランク」「長さ」をキーワードにして検索すると有用な情報が得られます。
■気にしなくても良い規格
・ペダルのネジサイズ:
ペダルのネジサイズは統一されているので、どんなペダルでも合います。
これはボトムブラケット一体型の製品。クランクを抜くときの専用工具も付いている。いつも乗っているロードバイクと同じ170mmのクランク長を選択。
ボトムブラケットとはクランク軸のことです。次から次へと新しい規格の物が出てきます。5〜6年前まではテーパーの付いた4角いものが多かったのですが、今はだいぶ少なくなってきました。今はセレーションで嵌合させるタイプが多くなっています。
■気にしなければならない規格の種類とバリエーション
・クランクとの固定方法:
同じSHIMANOでも規格が統一されていません。SHIMANOでは嵌合方式にオクタリンクという名前を付けていますが、オクタリンクにも複数規格があるので、
同じシリーズの物を購入するのが無難です。
・シェル幅
フレームに収まる部分の幅です。フレームのサイズと同じ物を購入します。
・軸の長さ:
左右のクランクを繋ぐ軸の長さです。長いとガニ股になります。
一番短い物を購入するのが無難です。ガニ股度合いは靴に取り付けるクリートの左右位置で調整できます。
軸が長いと前ギヤが少し外側に移動してちょっとだけ変速性能に影響が出ますが、ガニ股度合いの方が重要です。
チェーンの軌道を変える装置です。変速機はディレーラーと言います。「レール外し機」と言う意味でしょうか?チェーンを変速機で左右に移動させると、たまらずチェーンが隣のギヤに移動するという方法で変速します。ものすごく強引でうまくいきそうもない方法がとても小気味よく決まります。この発明はとても偉大だと思います。
■気にしなければならない規格の種類とバリエーション
・シリーズ:
変速段数の違いなどで悩む必要が無いので変速レバーと同じシリーズのもので統一するのが無難です。
自転車部品の場合、一点豪華主義というのは殆どメリットがありません。もらい物だったり、オークションで安く手に入ったりすれば別ですが...
・前変速機の取り付け方法:
フレームが丸パイプの場合バンドで固定するタイプの物を選択します。
異形フレームの場合はEタイプというボトムブラケットに固定する物を使用します。
・後変速機のトップノーマル/ローノーマル:
このバリエーションもちょっと前まではありませんでした。
変速機はバネの力でトップ側のギヤに移動する力がかかっています。この方式がトップノーマル。もし、ワイヤーが切れるとギヤはトップギヤに移動します。
最近これとは逆のロー側に移動する力がかかっている物が出てきました。この方式がローノーマル。
今後はローノーマルが主流になる物と思われます。SHIMANOが製品をそのように作り始めているという理由です。
両方とも使ってみましたが、あまり大きな差は感じませんでした。バネの力を使って変速する方が早く変速できるのでローノーマルはローギヤへの変速が早く出来、
トップノーマルはその逆です。
・後変速機のキャパシティー:
前後共に最も直径の大きなギヤにチェーンがかかっているときと、前後共に最も直径の小さなギヤにチェーンがかかっているときでは、チェーンのたるみの量が異なります。
最も大きなギヤにチェーンがかかっているときと最も小さなギヤにチェーンがかかっているときのギヤの歯数の差がキャパシティーです。
キャパシティーの大きな後変速機は2つのプーリーの距離が離れています。
前後変速機。前変速機はEタイプ。後変速機はローノーマル。
・ホイールの組立を参照
いずれ汚れて黒くなりますが、高い物は銀色です。汚れたら洗って銀色に戻しましょう。
■気にしなければならない規格の種類とバリエーション
・シリーズ:
シリーズ間で共用になっているためどのシリーズ用の物かよくわかりません。
サイクルベースあさひのホームページで確認すると良い。SHIMANOのホームページより親切です。
...と言うよりSHIMANOのホームページが不親切です。SHIMANOはハードに強いがソフトに弱いところがあります。
■気にしなくても良い規格
・コマの数:
通常114で、これで不足すると言うことは殆どありません。
XTRはロードバイク用のDURA−ACE9段用の物を使います。チェーンに塗ってある油が変わったようです。粘度の高い油が塗ってあり、一度落としてから使ってましたが、今は柔らかめの油が塗ってあるのでそのまま使えます。チェーンを繋ぐピンが1本付属しています。1本だけなので失敗は出来ません。ピンだけでも販売されています。
ワイヤーがむき出しになっている部分にこれを入れてフレームとワイヤーが接触するのを防ぎます。8角形をしているのでオクタゴンと言います。無くても問題はありません。今回使ってみましたが無駄でした、フレーム上部が傾斜しているので振動で動いてしまいます。
組立には専用工具がいくつか必要になります。ネットショップで購入できます。
ボトムブラケットの種類によって、必要になる工具が異なりますのでメーカー指定の物を使用します。シマノであれば使用する工具の型番が指定されているので、それを購入すればOK。シマノは比較的安価に専用工具を提供しています。ボトムブラケットは形式を問わず取り付けには必ず専用工具が必要になります。取り外すときにも必要になります。3年に1度程度の使用頻度しかありませんが自転車店での取り付け工賃より安い場合があるので購入して損はしません。
今回使うのは左の物。約¥1000。右のタイプで固定する物もあります。
1/2インチのソケットレンチを持っていれば、上のスパナ型の物よりもこちらがお勧め。
ボトムブラケットからクランクを抜くときに必要になります。組立には必要ありません。今となっては少数派になってしまいましたが四角穴のクランクを抜くときにはこれが必要です。最近の物は抜くときに専用工具が不要な物が増えてきています。
今回は使いません。この写真はご参考。四角穴のクランクを抜くための工具です。銀色の物も、黒い物も機能は同じ。黒い方はスパナかモンキーレンチと併せて使います。
チェーンのコマを外したり、繋いだりする工具です。これは自転車店用の大きな物。小さい物は¥1500ほどで入手できます。大きさの違いは作業性の違いです。
ブレーキやシフトケーブルのアウターやワイヤーを切るのに使います。普通のワイヤーカッターでも代用できますが専用品は切断時にアウターが押しつぶされて変形するのを防ぐ刃先形状になっています。それでも楕円形につぶれます。
左はシマノ製。右がパークツール製。シマノの方が安っぽく実際安いがパークツールの物よりなぜかうまく切れます。
チェーンのコネクトピンを折るのに使用します。
つぶれたアウターの穴を元に戻すのに使います。こんな感じに、つぶれたアウターの穴に差し込みます。
前変速機はEタイプというボトムブラケットに固定するタイプの物。このボトムブラケットは68mmか73mm以外のフレーム幅には対応していません。この辺の細かい仕様は取扱説明書を見ないと解らなかったりします。取扱説明書はシマノのホームページからダウンロードできるので購入する前に確認しておいた方が良い。
バンドでフレームの丸パイプに固定するタイプは変速機の上下方向の位置調整に悩むのですがEタイプは固定すべき場所が一意に決まってしまいます。
クランクと嵌合する部分にはグリースをたっぷり塗っておきます。これはちょっと塗りすぎ。
スラスト方向の予圧はクランクの付け根に付いた、このリングを回して調整します。
予圧がかかったらリングを固定。
クランクが取り付けられたところ。
後変速機を取り付けたところ。チェーンテンションの調整ネジが付いていますが通常そのままでOK。今まで何台も組み立てましたが調整をする必要は一度もありませんでした。
標準付属の変速機アウターは短すぎて後変速機に届きませんでした。長さは中途半端です。切らなければ使えないので長いものを1本入れておいてくれる方が親切です。右は買い置きしてある変速ワイヤーのアウター。
ギヤの位置によってワイヤーはかなり無理な方向に曲げられますが、これで正しいようです。
ケーブルの取り回し。特にこれが正解というのはありませんが無理に折れ曲がったりしない経路にします。
ステムの前で交差して
フレーム上部を通って
前変速機のワイヤーは右側(写真では上)を通って下へ。後ろブレーキと変速機は左へ。
(ワイヤーに通したオクタゴンは振動でこの位置にたまってしまいました。無駄なので取ります)
分岐して...
それぞれ変速機とブレーキへ。
チェーンの取り付けは簡単ですが、長さを決めるのが面倒です。説明書の通り一番大きいギアにチェーンをかけてみて、その状態+2コマが適切な長さになります。短すぎると一番大きなギヤにチェーンがかからなくなりますし、長すぎると一番小さなギヤにチェーンがかかったときにたるんでしまいます。コネクトピンの予備を購入していなければやり直しできないので、実際にチェーンをかけてみて長さを確認してみるのが理想です。チェーンの構造を見れば解りますが、2コマ単位でしか長さを調整できません。
クランクの周り止めや、チェンを切る位置の目印に荷造り紐が便利です。
こちらはまだ繋がっていないチェーンを紐で引っ張って作業しやすくしている図
上の写真のちょうどスタンドで隠れて見えない部分の拡大図。チェーンを繋ぐ位置にコネクトピンを差し込んで...
チェーンカッターでピンを押し込みます。押し込みすぎに注意。動きが重くないか確認してから裏側に飛び出たピンをペンチで挟んで折ります。案外簡単に折れます。
■乗った印象:
ブレーキレバーを押し下げてシフトアップするのは不自然だと思いましたが、慣れの問題のようです。やはり人の手は器用に出来ています。
■変速機トラブル:
どうも変速性能が悪く使い物になりません。レースに出たとき歯跳びしたのは調整不良だけではなさそうです。どんなに調整してもチェーンが鳴らないように出来ません。トップを基準にすると中央付近からロー側の変速がめちゃくちゃ、ローを基準にするとトップだけひどいチェーン鳴りが発生。
原因を追及するためディレーラーのストロークを計測してみましたが、[トップ]−[トップ−1]間のストロークが5.7mmほどあります。あまり精度良く計測しませんでしたが2度計測して、それぞれ5.77mm、5.69mmです。9段変速なので8倍すると(5.7×8=45.6mm)後ギヤの幅になるはずですが後ギヤのローからトップまでは35mmほどしかありません。変速機のカバーを開けて見ようとしましたが、開け方が解りません。プラスチック製なので無理すると割れそうなので、とりあえずSHIMANOのお客様相談窓口に電話します。ロードバイクを組み立てたときも変速機が不良品だったので変速機には泣かされています。同じくハイエンド(DURA−ACE)の製品で前ギヤ3段のうち、ミドルにギヤが入らない問題だったように記憶しています。そのときは変速レバーを交換してもらって直りました。
問題の状況を画にするとこんなです。後変速機は4.4mmずつ動くはずだがTOP側だけ5.7mmも動いてしまう。1.3mmmも余計に動くとチェーンが外側に外れようとしてひどく鳴るのだ。変速機にはストッパーがあってTOPより外に、つまりフレーム側にチェーンが落ちないようになっているのだが、それを調整してしまうと、そもそもTOPに変速できなくなってしまう。つまり今のままではフラッグシップモデルが何と8段変速となってしまっているのだ。比率で言えば約1割引だ。3割引で買ったので、差し引き2割儲かったと考えるべきか?
で、シマノのお客様相談室に電話してみました、普通、お客様相談室は0120の無料なのですが1分¥10取られました。さすが関西の企業です、しっかり「相談料」を取ってくれます。 電話をかけてる側からすると相談じゃなくて苦情なんですけど... しかも、電話に出てくるのは「おっさん」なのだ。お互い様か? そしておっさんと話をすること約10分。原因不明で現物を送ることになりました。シマノ直送でも良いとのこと。但しシマノ直送にすると送料は自己負担になります。
トップ側の変速不良 <−MOVIE(SIZE:1.27MB)
戻ってきました。特に異常がないとのこと。
エンドが曲がっていないかを確認。エンドの幅は約7mmで規格内です。
どこもおかしく無いので再度組み付けました。アウターを交換。その時気づいたが、アウターの外皮からワイヤーがだいぶ出ている。これが原因か???
シフトワイヤーは先端がばらけてきてしまい、うまくアウターに押し込めないので交換。写真は交換しにくいワイヤーの図。引っかかって出てこない。
結果、直りました。???。トップへの変速だけちょっと力が必要ですが、変速できないレベルではなくなりました。こそっと直したのかな? それとも上のアウターだろうか? 何だか原因解りませんが直ったのでよしとします。