PCケース 作成:2004-12-30 〜 2005-03-11
買い換えのため使わなくなっていたPCを復活させます。専用ケースはではおもしろくないのでケースを自作してみました。CPUファンを廃止し静音設計します。
背面パネルは、ケガキではなく型紙を使いましたA4用紙に切り抜きパターンを作図し、裏に両面テープを貼ってカッターナイフで切り抜いた後、アルミ版に貼り付けました。これを頼りに穴開けフライス加工をします。
アルミ版の材質はA1100P−H24です。混ぜ物のないアルミなので柔らかく非常に切削性の悪い材質です。フライスでいきなり削るとフライスが目詰まりするため、ドリルで荒く穴あけして削る部分を少なくしてからフライス加工します。
角のRを残して切削完了です。角のRはプリント基板切断用のギロチンを使用しました。直線は無理ですがコーナーRなら何とかなります。板厚は1.5mmです。
背面パネルの図面(鍋CAD)
ケースはタカチ製UC32−8−24です。高さが足りないので12mmほど継ぎ足して高さをかせいでいます。
マザーボードをケースに固定するときのスペーサーです。固定に必要なのは6個です。出っ張りのある物はケースに穴あけをするときのジグです。
マザーボード固定用のネジは皿ネジにします。皿モミをセンタードリルでやるとうまくいっても右のようにビビリ痕がつきます。左は失敗したもの(5角形の穴があいた)です、修正しましたが周辺部がガサガサになってしまいました。穴あきタイプの面取りカッターを使えばうまくいくかもしれないので発注しました。カッターが届くまでしばらく作業中断です。
いろいろな面取り可能な刃物で試してみました。結局ドリルチャックに銜えて手でグリグリやるのが一番うまくいきます。
機械加工でうまく座ぐるためには
・ワークの材質
・刃物の回転数
・刃物をワークに押さえつける力
をシビアに調整しなければならず、どんな物でもうまくいく方法が見つかりません。もちろんワークをしっかり固定できればうまくいきますが電気工作用のケースの固定は容易ではありません。手回しでも同様で機械加工よりは神経質ではないもののやはり刃物を選びます、うまくいったのは4番の物だけです。手回しでの結果は以下の通り。
1.センタードリル:2枚刃なので刃のない方向にぶれるためうまくいかない
2.穴あきタイプ面取りカッター:実質1枚刃なので360度全周を座ぐるのはかなり面倒 丁寧にやれば何とかうまく座ぐれる
3.三枚刃面取りカッター(逃げ大):三枚刃なので穴への収まりはいいが、逃げが大きいと手動でも四角形や五角形の穴になってしまい全くダメ
4.三枚刃面取りカッター(逃げ小):逃げが少ないためこれが一番うまくいく 問題は逃げの小さい刃物をどうやって探すかという点 自分で作ってしまうほうが早いかもしれない
背面の完成イメージです。
上蓋をはめてみましたが隙間があいてしまいました。正確に測ったつもりなのですが...削り直しが必要です。
ヒートシンクはファンを付けずにケースに熱を逃がす方式にします。50×10mmのアルミ棒をT字に組み立てました。アルミサッシ用の頭の小さな皿ネジで止めてあります。CPUはPentiumIII−800MHzです。下側の小さな切りかきはコイルをよけるための物です。
こんな感じでケースに熱を逃がします。位置があっていなかったので長穴にして調整可能なようにしました、皿ネジに長穴という不自然な組み合わせになってしまいました。
前面パネルにもUSBポートを付けます、¥280でした。ネジ穴はインチネジでした。インチの皿ネジはがなかったのでバカ穴にするためドリルでネジ山を落とそうとしたら埋まっていたナットが取れてしまいました。
取りつけ部分をアルミで作り直しました。長さも切りつめました。
秋葉原まで自転車で往復3時間かけてスイッチを買いに行きました。1個¥200です。買ったのはこのスイッチと同時並行で作っている電源装置用の1KΩのボリューム¥90だけです。冬場は北風が強く自宅の神奈川県からだと往路がきついです。
電源スイッチとリセットスイッチ共に同じ物ですが、不用意にさわらないようにするためガードを付けます。図面と現物の縮尺が違いますが右の写真のイメージです。特殊なサイズ(メートル並目ネジではない)なのでタップとねじ切りバイトを購入しなければなりません。
大きすぎたパネルを少し(0.7mm)削っています。前回は木の捨て板にネジ止めして側面を削りましたが今回は円柱に挟んで固定してみました、金属は押さえつけても変形しないのでこちらの方がしっかり固定できます。
仮組みして放熱性能を調べました。CPUFANは付いていないので当然回転数は 0 RPMです。約1時間後の温度は室温17度で43度になりました。徐々に上昇する気配がありますが46〜47度で頭打ちになりそうです。CPU付近のヒートシンクはかなり熱くなっているのですが、ケースはなま暖かくなる程度です。夏場の室温を35度、ケースにふたをすることによる温度上昇を5度だとすると、47+(35−17)+5=70度(熱抵抗の計算はこんないいかげんな計算で良かったか?)となり、ちょっとさわれない温度になりそうです。半導体が昇天する温度はたしか150度程度なので、とりあえず大丈夫ということにしておきます。
Windowsインストールの時だけCD−ROMを接続します。インストール後はUSB経由でCD−ROMを接続するのでCD-ROMは内蔵しません。フロッピーも無しです。
ハードディスクはケースに直接ネジ止めすると振動が音になるためゴムブッシュで防振対策をします。そのためのマウントを2mmのアルミ版から作ります。外形はジグソーで少し大きめに切り取り、外形をフライス加工で整えます。サイズのそろった円柱は板を固定するのにとても便利です。一度に削れるのは3面だけなので奥を削るときは押え金具を移動させなければなりません。角の部分はちょと凝って丸めてみました。ロータリーテーブルの回転中心とコーナーRの中心軸をあわせる必要があるので位置決め固定が面倒です
穴はフライスであけています。アルミ相手ならドリルよりきれいに穴があきます。ゴムブッシュの溝の厚さが1mmなのでゴムブッシュの直径だけ板厚を薄くしています
ハードディスクを固定しているネジがケースに当たってしまうので、真鍮でブッシュを作ってケースから少し浮かします。
上面パネル(立てて使うので実際は右パネル)はφ50×100mmの同じサイズの丸棒を作って固定しました。2点だけの固定ですが径が50mmあるのでしっかり固定できます。中央の丸棒は固定せずに刃物の出来るだけ近くに移動させます。
しっかり固定できればこの穴あきザグリカッターが一番よく切れます。こんなふうにキリコは丸まって上に排出されます。
正面パネルには2つのUSBコネクタ、ハードディスクLED、パワーLED、電源スイッチを取りつけます。センタードリルでネジ穴とザグリを同時にあけてしまいます。リセットスイッチは廃止しました。
正面パネル完成です。
LEDを取りつける飾り金具をA2024アルミから削り出しました。白い物は金具をパネルに固定する部品。ジュラコン製で金具とはめあいをきつくしてあり、はめ込むだけで固定します。LEDと金具は接着剤で固定する予定です。
同じサイズの物を複数作るとき軸方向の送りを毎回一定量操作するのは面倒です。そこでつっかえ棒を作ってみました。ミガキ丸棒にネジを切っただけの物ですが案外便利です。六角ボルトの頭を円錐状に少し削って尖らせてあります。上の飾り金具はこれを使って作りました。
いよいよ最後の部品の製作です。このページの真ん中当たりにある赤ペンで書いた図面のスイッチガードです。これはナットの部分M14×1のネジを切りました。材料は超々ジュラルミン、硬くてネジを切るのが大変でした。もっと柔らかい物が良かったのですが手元にあったちょうど良い直径の物がこれでした。
ネジを切るためにギヤを掛け替えます。ベルトは最低速になるようにしています。スイッチを切っても惰性で主軸が3〜4回転回ってしまうので切り終わりは早めにスイッチを切って手動でチャックを回します。左が掛け替え後、右が掛け替え前。全てのギヤと2つの軸の位置を変更しなければならないので大仕事です。しかもギヤと軸はかなりタイトで抜き差しに手こずります。掛け替え前の状態はもっとも減速比を大きくした状態です。掛け替え後の上2つの軸の小ギヤはかみ合っていません。単なるスペーサーとして機能しています。
切ったネジにナット部分をねじ込んでみました。OKです。
形を整えて完成。ちょっと黒いボタンの出っ張り方が足りませんが、よしとしました。
部品が全て完成したので組み立てました。中身はこんな感じ。
電源を固定しているのはジュラコンで作った部品。これで電源装置の後部を押さえている。
正面と背面。一応見た目は完成ですがハードディスクの振動音が大きすぎます。ハードディスクの振動対策はやり直しが必要です。防振対策のゴムブッシュはほとんど機能していません。ケースを横置きにしてハードディスクを上面にぶら下げる位置にするとかなり静かになりますが、それでもせっかくのCPUファンレスを台無しにしてくれる音がします。
ゴムブッシュを自作するのは困難なので2枚のアルミ版でゴムシートを挟み込む構造にしてみます。ゴムシートはホームセンターで購入。厚さ2mm。うまく防振できるかわかりませんがとりあえず実験です。
ゴムシートに穴あけをするポンチを作りました。S45Cですが先端部だけ焼き入れして硬くしてあります。とても硬くなりますが脆くなります。
まだ未完成ですが性能の確認のため取りつけてみました。ゴムシートの厚さ2mm、1mm、0.5mmで試してみましたがどれも満足いく防振/防音効果がありませんでした。この方式は取りやめです。
失敗作のゴムシートでハードディスクを吊ってみました。効果ありです。この方式で作り直します。
こんな金具を作ってゴムシートから切り出したタブを取りつけました。右はハードディスクに取りつけたところ。
ケースに取りつけたところ
ゴム足はポンチを作りこれをフライス盤で回転させながらゴムシートから切り出しました。このゴムシートは弾まないゴムで作られていますが防振という意味ではほとんど機能を果たしません。
ウィンドウズ・ペケピーをインストールし直して、やっと完成です。WindowsはCPUを休ませるようで、CPUはぬるいままです。BIOSの青画面の方がずっとCPUが熱くなります。電源FANの音がわずかに聞こえるだけのとても静かな機械になりました。パワーランプは青色LED(エメラルドグリーンに写ってますが実際は青です)、ハードディスクアクセスランプは白色(ちょっと目障り)です。