超音波温度計

電子標的のための超音波を使用した温度計の製作
実際は音速を計測したいが音速と気温は1対1に対応しているのでどちらか一方が決まれば計算で求められる
理論上は超音波で気温の計測は可能であるが実用になるのかは製作開始時点では不明

悪い所:
・形状が大きくなる
・風の影響を大きく受けるため風防が必要
・マイク-スピーカー間に風防をつけると風防の影響で位相がずれるため機械的な形状安定性が必要
  -風防内のゴミの影響を受ける可能性あり
  -風防を変更したら校正が必要
・製作後に校正する必要がある

良い所:
・熱伝導を使っていないので温度変化の追従性が良い
・回路内にある発熱する部品の影響を受けにくい
・デジタルノイズの影響を受けにくい
・電源電圧変動の影響を受けにくい


2018-12-14

ブレッドボードで基礎実験。超音波スピーカーから発した音波がマイクに到達するまでの時間を計測することは難しいのではないかということが電子標的で試した超音波測距モジュールの実験で分かっている。またスピーカーで出した超音波とマイクで受信した位相のずれを計測するとうまくいきそうなことも明らかになっている

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位相のずれを計測。水色がスピーカーに与えている電圧。黄色がマイク側の回路出力波形。オペアンプで10倍程度に電圧を拡大しているだけのシンプルな物。超音波測距モジュールはバンドパスフィルタを使っているがフィルター回路のジッターが大きく使えそうもない。単純な回路のほうがうまくいきそう。室内気流の影響で1μ秒程度波形が揺らぐ。大体0.5度に相当する。超音波風速計なるものもあるので温度を計測するためには気流の影響を排除する必要がある

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スピーカーとマイク間をパイプで囲むと気流の影響はなくなる。パイプをヒートガンで加熱すると波形が動くのが確認できる

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パイプ無し

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黒い太いパイプ。音波の反射による影響を受けるのかパイプを通すと位相もずれる。波形の振幅も大きくなる

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細いパイプ。更に振幅が大きくなる

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パイプを被せた状態で単発パルスの計測。振幅は大きくなるが振動し始めをとらえるのは難しい

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超音波スピーカー、マイクの周波数特性。どちら側の特性なのかは不明であるが有効な帯域幅は意外と狭い。40±3kHz程度が使用可能周波数

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36kHz。下はこの辺が限界

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38.5kHz

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40kHz

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41.3kHz

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43.5kHz。上はこの辺が限界

2018-12-15

マイク-スピーカー間距離500mmの時の気温の変化による位相のずれ。青が周波数42kHz、赤が38kHz。横軸が気温、縦軸が位相のずれ。計測する温度範囲内で青と赤間の位相が360度ずれなければ両者から気温を特定できる。周波数は位相が360度ずれない範囲で差が大きいほうが計測精度は上がる。理想的には8kHz程度にしたいが超音波マイク、スピーカーの周波数特性上4kHz程度しか差を付けられない

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液晶ディスプレイに情報を表示したいがmikrobasicのLCDライブラリーのバグなのか表示が出来ない。たまに表示されるときもあるが文字化けしている。以前作ったLCDサブルーチンを移植することにする。処理速度が早すぎるような気がする。たぶんdelay不足

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全然ダメ

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たまに表示できるが化けている

2018-12-17

LCDルーチンを移植。表示されているのは中間データで特別な意味はない
計測手順:
1.マイク-スピーカー間距離を定規で測る。これは正確でなくてよい
2.現在の室温において各周波数38,40,42kHzの位相のずれを記録する
  この室温を基準温度として気温を計測する仕組みなのでこの時の室温は正確に記録されなければならない
3.定規で計測したマイク-スピーカー間距離と40kHzにおける位相のずれから正確なマイク-スピーカー間距離を求める
4.38kHzにおける位相のずれと42kHzのそれの差から基準温度とのおおよその気温差を求める
  周波数差が大きければかなり正確に気温差を求めることができるが、この周波数では±2~3度の誤差がある
  双方の位相が360度ずれると気温を特定できないので計測範囲は基準温度から±60度
5.上記の温度範囲と40kHzにおける位相のずれ正確なマイク-スピーカー間距離から気温を特定する
  位相のずれの周期は10度程度なので温度範囲が数度に絞り込めていると気温が特定できる
  40kHzを使うのはこの周波数で一番感度が良いため
これでうまくいくはず。絶対精度がどの程度あるかはわからないが分解能は0.08度とかなり小さい

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2018-12-18

位相のずれはのこぎり波の非線形な式になるので中間データを表示しないと計算結果が正しいのか確認しにくい。情報量が多いのでシリアル通信を使うように変更。気温は16.9度

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ブレッドボードは動かせないので試作基板を作ってしばらく検証する予定。メモリー不足でPIC16シリーズからPIC18に変更した。PWMの仕組みがかなり違う。mikrobasicのLCDライブラリーが動かないことは変わらず。4ビットのデータをセットしてからEnableのクロックを出力するまが早すぎるのではないかと思う。クロック周波数を20->40MHzに上げたので分解能は2倍に向上している。この温度計は大きくなるのが欠点であるが
・熱伝導を使っていないので温度変化の追従性が良い
・回路内にある発熱する部品の影響を受けにくい(大抵温度計は単体ではなくそれ以外の回路と一緒に使われる)
・デジタルノイズの影響を受けにくい
・電源電圧変動の影響を受けにくい

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2018-12-19

基板製造。銅箔が少し黒ずんでいたところがうまく転写できず。多少酸化しているほうが食いつきが良いと思ったが違った。転写できていないのは実質配線1本だけなのでマジックで汚く修正

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風防は熱を持たない軽い物で作りたいが変形してしまうと位相が少しずれる。段ボール製は失敗作

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2018-12-20

風防は木製

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2018-12-20

通気口の影響で反響しなくなる

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穴をあける前の波高は電源電圧で波形がクリップしていたが半分以下になってしまった

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2018-12-27

翌日同じ室温の時計測すると測定値が一致しない。今のところ実用になりそうにない。パイプを変更してみる。プラスチックの電線管

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パイプが細くなると波形は増幅される。ほぼ矩形波

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2019-01-17

繰り返し制度が無いので超音波センサーを止めて圧電スピーカーと普通のコンデンサーマイクに変更。しばらく実験を続ける。周波数は20kHzに落とした

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超音波センサーもコンデンサーマイクと同じような物かと思ったが静電容量はだいぶ違う

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超音波センサー 1890pF

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コンデンサーマイク 2.6μF

2019-01-22

屋外でテスト。大体あっているが無風でないと計測値が安定しない。誤差も1~2度ある。うまくいきそうもないので中断

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