蛍光表示管LD8035E

NECの蛍光表示管 LD8035E の点灯実験

・カシオミニで使用されていたVFD。40年ほど前の製品
・ガラス管の直径7.5mm
・輝度が低いのでダイナミック点灯は不適
・AllegroMicroSystemsのA6812でスタティック点灯させるとよい
 A6812は製造終了品であるがAlliexpressにはまだ残っている(2016年現在)
・輝度のばらつきが大きいので各管個別にヒーター電圧を調整できるようにしておくべき
・電力のほとんどはヒーターによって消費される
・ヒーターの両端電圧は20mA流した時に0.48V程度になる
・ヒーター電源は低電圧なので降圧型DC-DCコンバータを使うとよい


2016-09-19

文字の前に細いフィラメントがある。真空管同様ここから電子を飛ばす。ハチの巣がグリッドでフィラメントから飛んだ電子がグリッドに吸い寄せられる。電子はグリッドに全部捕まらずに通り抜ける。文字パターンは各セグメントごとに独立した蛍光体を塗った電極(アノードと呼ぶ)になっていてグリッドを通過した電子が当たって光る。グリッドをヒーターと同電位にすると飛んだ電子がグリッドで跳ね返されて消灯する。これはダイナミック点灯の時に使う。スタティック点灯ならグリッドは蛍光体電極と同電位にしたままで良い

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こんなに小さい。カシオミニの売れ残り在庫かもしれない

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フィラメントに流す電流は20mA程度がよさそう。26mAでは赤くなっているのが分かる。15mAでは暗い。実測20.084mA流した時のフィラメント電圧は0.485V。抵抗値を計算すると24.15Ω。フィラメントが冷えているときの抵抗値は9.12Ω。フィラメントは電気を流して熱くなると電気を流しにくくなって抵抗値が大きくなる。白熱電球と同じ

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文字はフィラメントの電位と文字の蛍光体電極との電位差が大きいほど明るくなる。フィラメントは抵抗体なので電位差は文字の上のセグメントと下のセグメントでは異なることになるがこのサイズの蛍光管ではわからない。肉眼は輝度差に鈍感なのでデジタルカメラで確認してみたが差が分からなかった。1つの管に複数桁が入っている蛍光表示管ではフィラメントを交流駆動して輝度差を無くすらしい

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上の点灯状態からグリッドをハイインピーダンス(無接続)にするとううっすらと光ったままになる。周囲が明るいと見えないが真っ暗だと肉間でも確認できる。ダイナミック点灯するときは 文字電極の電位12V グリッド電極の電位-3V フィラメント0V のようにグリッドをフィラメントよりさらに低い電位にして消灯させるらしいがスタティック点灯実験ではグリッド電位をマイナスにしなくても消灯する

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フィラメントに流れる電流は大きいが各セグメントの点灯に必要な電流は小さい。電圧15Vでこれくらい。36.44μA

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グリッドの電流。0.565mA。電圧は15V

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2016-09-20

LD8035は今から44年も前の物であるがVFDは今でも風呂場のリモコンなどで使用されている

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VFDは電源が複雑になる。グリッド電圧をフィラメントより負電圧にする必要があるかも含めて検証する

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2016-09-29

ダイナミック点灯回路の実験
・フィラメント電位をGNDより上げる必要はない。カソード(K)をGNDに接続して20mAの電流が流れるようにヒーター(H)の電圧を調整する
・トランジスターアレイTD62783はオープンコレクタなので抵抗でプルダウンしないとゴーストが発生する
・ソフトウェア的な桁ブランキングは必要ない。古い表示装置のため桁ブランキングが必要になるほど明るくならない
・アノード電圧(セグメントA~DP)は18V程度にしないと暗い

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グリッド電圧波形。黄色はプローブに何も接続していないのでノイズ波形。意味があるのは水色だけ。2灯だけのテストプログラムなのでON/OFFデューティーは50%になっている

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プルダウン抵抗なし

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プルダウン抵抗100k

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プルダウン抵抗なしの時のゴースト

2016-10-03

Digikeyでキーワード「vacuum fluorescent display driver」で検索するといくつか。VFD用ドライバーが見つかる。殆どがシリアル入力パラレル出力のシフトレジスター。スタティック点灯で使うものと思われる

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VFDのフィラメントには20mAも電流が流れる。12Vや5Vの電源電圧で使うためには直列に数ワットの大きな抵抗を入れる必要があるためDC-DCコンバーターを使う。
この回路は
・5V入力1V出力
・R14~R19が電源の負荷になるフィラメント。VFDを6個使うときの物
 フィラメントの抵抗値は24Ω程度であるが26Ω程度の抵抗を直列に入れて輝度調整できるように回路図上は50Ωとしてある
・LTC1707はFBピンが0.8Vになるように出力電圧を制御する
 R13が800ΩでFBが0.8VだとR13には1mA流れる
 FBピンには電流がほとんど流れないのでR12にも1mA流れる
 R12の両端電圧は0.2Vとなり出力電圧が0.2+0.8=1.0Vとなる
スイッチングレギュレータは外付けのダイオードが必要になるがLTC1707に内蔵されている

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これは電源のプラス側から1Vの電圧を取り出す回路の例
・5V入力4V出力(5V-4V間が1V)
・R5~R22が電源の負荷になるフィラメント。上記の回路同様抵抗を直列に入れて輝度調整できるように回路図上は50Ωとしてある
・LTC1170はFBピンが1.25Vになるように出力電圧を制御する
 R2が1.25kΩでFBが1.25VだとR2には1mA流れる
 FBピンには電流がほとんど流れないのでR4にも1mA流れる
 R4の両端電圧は0.4Vとなる
 R3に流れる電流はトランジスターの増幅作用により非常に小さいのでR3の両端電圧は非常に小さく無視できる
 出力電圧=5V-R4両端電圧0.4V-Vbe0.6V=4V

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5Vから20Vを作り出す回路の例
・R10が負荷
・LTC1170はFBピンが1.25Vになるように出力電圧を制御する
 R9が1.25kΩでFBが1.25VなのでR9には1mA流れる
 FBピンには電流がほとんど流れないのでR11にも1mA流れる
 R11の両端電圧は18.75Vとなり出力電圧が18.75V+1.25V=20Vとなる
存在しない抵抗値を使っているので実際にはこれに近い抵抗値の物を使うことになる

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LTspiceファイル
ファイル ファイルタイプ 添付ファイルの解説
dc-dc_drop.zip LTspice トランジスターは標準状態では存在しない2sc1015を使っているので置き換えないと動かない

2016-11-25

Aliexpressを見るとVFD専用IC MM5316N の在庫がかなりあるので時分だけの時計ならこれをそのまま素直に使うと良い。スタティック点灯なので暗くないはず。一番安いところで送料込み$6とちょっと高い
当方が理想形と思う回路をVFD時計の作り方に掲載しておいた

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