2011-08-28
フォトカプラを使うための最も単純な回路。通常、LEDを光らせる電源と、出力側の電源は別になるのだが面倒なので同じ5V電源を使用している。
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R1側が入力
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実験回路。ファンクションジェネレーターの信号をトランジスタ&TTLでデジタル信号に変換してフォトカプラの入力としている。
実験回路の波形。R2=1kΩ。立ち上がり(フォトカプラ ターンOFF)が遅すぎる。信号の周波数は9.15kHz。やや高めだがPWMでモーター駆動するならよくある周波数。これだけ入力と出力が違っているとモーター駆動に使ったら間違いなくFETを燃やしてしまう。
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上段が入力。LEDにかかっている電圧を測定している。振幅は大体1.2V。下段が出力。振幅はほぼ電源電圧に等しい5V。R1は330Ω
R2を小さくしてみる。だいぶ改善されているが入力=出力とは言えない遅れがある。
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R2=470Ω 出力振幅は電源電圧と同じ5V
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R2=330Ω 出力振幅は電源電圧と同じ5V
これがほぼ素子の限界速度。上の波形の物は 入力電流×増幅率=出力電流 が成り立っていない。
実際の電流はR2=1kΩの時
・R1に流れる電流=LEDに流れる電流=11.5mA
R1の入力が5Vの時、つまりLEDが点灯しているときのLED端子間電圧は約1.2V
・R2に流れる電流はLEDが点灯しているときフォトカプラのコレクタ(R2が付いている端子)はほぼ0V。
R2には電源電圧5Vがかかるのでフォトカプラのコレクタ-エミッタ間に流れる電流は5mA
・実測では増幅率(CTR)は2.0(=200%)
実験に使ったフォトカプラはTLP521でCTRは1~6(100%~600%)にばらつく
式に当てはめてみると
11.5[mA]×2.0[倍]=5[mA]
となり式が成り立っていない
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R2=200Ω カーソル位置が電源電圧 GND と +5V。R2を小さくすると速く反応できるようになるが出力振幅が小さくなってしまう。
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立ち上がり部の波形拡大。カーソル間の時間6.1μ秒
一方、R2=200Ωの時は
・R1に流れる電流=LEDに流れる電流=11.5mA これは変わらず
・LEDが点灯しているときR2にかかっている電圧は3.3V
オームの法則から電流は16.5mA。フォトカプラのコレクタ-エミッタ間に流れる電流もこれと同じ
式に当てはめてみると
11.5[mA]×2.0[倍]=16.5[mA]
成り立っているとは言いがたいが1kΩの時よりはだいぶマシになっている。式が完全に成り立つにはもう少し抵抗を小さくして電流を流さないといけない。
入力側のLEDに流れる電流と出力側のフォトトランジスタに流れる電流の関係。素子はTLP521。回路は一番上のもの。電源電圧は5V。このグラフの直線部分で使用すると良好な応答速度を得られる。入力電流を大きくしてはいけないことが解る。直線部分があると言うことはデジタル信号だけでなくアナログ信号も伝達可能だ。もちろん高い周波数の信号は遅れが大きいので不可。
出力側の抵抗R2を小さくすれば高速動作できるようになるが副作用として
・出力波形の振幅が小さくなる
・より多く電流が流れるようになり、素子の絶対最大定格(コレクタ電流 Ic)を気にした設計が必要になる
・さらにコレクタ-エミッタ間の電圧も大きくなり、絶対最大定格(コレクタ損失 Pc)を気にした設計が必要になる
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手持ちのフォトカプラのCTRを全部調べてみた。メーカーも種類も異なるが、ほとんどばらつきは無く全部200%程度であった。
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TLP521-4(GB)とPC817C。どちらも秋月電子で購入した物
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増幅率CTRのばらつき。データシート上ではTLP521-4(GB)の場合は100%~600%もばらつく
非飽和領域で使うと電源電圧いっぱいに出力波形が振れない。改善するためにはこんな回路にする必要がある。
この回路はさらにトランジスター(T11)を追加しカスコード回路にしてミラー効果の影響を小さくしている。
・C点の電圧を一定にするとミラー効果が小さくなる
・A点は電源を抵抗で分圧しただけなので一定
・A-C間は約0.6Vで一定なので、C点の電圧が常に一定になる
・B点は電源電圧いっぱいに振れないのでT12の出力Dで電源電圧いっぱいに振れるようにしている
モーターの電源電圧は5V。電圧が変われば抵抗値を変更する必要がある。
結果の波形。LEDの点灯遅延など回路全部の遅延を見なければいけないのでこの回路の入力信号と出力信号の波形を観測。4本足の汎用フォトカプラだと大体この程度の速度が限界。非飽和領域でフォトカプラを使うことを推奨している文献などは見かけない。回路数が多く出費を抑えたいときや一品物の実験回路にとどめておくのが無難。
LEDを点灯させている1.2kΩ(R11)の抵抗値を小さくすると出力波形の立ち上がりが遅くなる。R22を小さくすると波形の立ち下がりが速くなる。抵抗値を調整すれば立ち上がりと立ち下がりの遅れを等しく出来る。モーターのPWM駆動においては立ち上がりと立ち下がりの速度が同じであれば遅れ時間の長さはデューティーに影響を与えない。
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一番上の回路の出力にエミッタ接地回路を繋いで電源電圧いっぱいに出力波形が振れるようにした物。回路トータルの遅延は約6μ秒。すぐ上の回路のB,C点を直結してT11,R7,R27を取り除いた回路に等しい。
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これはすぐ上の回路の波形。1.2kΩの抵抗(R11)の左側(下側の波形)とD点の波形(上側の波形)の遅延。T11のおかげで遅延が小さくなっている。
高速動作可能なフォトカプラ。東芝TLP559。8ピンだが1回路しか入っていない。高速なフォトカプラは電源ピンが余計にある。フォトトランジスターのベースが出ている物もある。メーカーが製造している品種はとても多いが1個単位で入手可能な物は限られる。TLP559は高速型の定番。
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データシート上ではとても高速であるように見えるが、tpLHは出力電圧が1.5Vになるまでの時間を意味する。電源電圧いっぱいまで立ち上がるまでの時間では無い。
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回路は一番上の物と同じ。R1=230Ω、R2=1.8k?。このフォトカプラはLEDに流す電流をやや大きめにして使うのが特徴。CTRが汎用フォトカプラに比べて小さい。ターンONが遅いのは高速型も同じ。
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上が信号入力。下がフォトカプラ出力。フォトカプラターンONの波形。
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上が信号入力。下がフォトカプラ出力。フォトカプラターンOffの波形。
1μ秒は速いのか遅いのか?エミッタ接地回路を2段にして実測してみた。フォトカプラの出力が電源電圧いっぱいに振れないときはエミッタ接地回路を追加すれば良いが追加した回路のためにどれだけ遅くなるのかを知っておくと便利。スピードアップコンデンサを入れないとまともな速度で動かない。
計測結果、上側がOUT、下側がINの波形。
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OUTの波形。2段のエミッタ接地回路で1μ秒。意外と遅い
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立ち上がりは高速
2016-01-30
高耐圧のフォトカプラTLP627のテスト。耐圧は300V。普通のフォトカプラは50~70V程度
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R1=330Ω、R2=10kΩ、Vin=5VでVoutを変更してみる。黄色が入力。水色が出力。ターンオンは高速。ターンオフは出力電圧が大きくなるほど長くなる。立ち上がり波形の曲率は同じまま波形が上方に伸びていく感じ。
Vinはファンクションジェネレーターの出力をそのまま使っているのでR1が小さいと出力電圧が若干落ちる
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Vout=5V
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Vout=12V
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Vout=18V。完全にOFFするまで300μsec
Vout=10V、R2=10kの時のターンオフ時間は赤矢印の部分で上記の結果とほぼ一致する
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上のグラフからLEDの輝度を下げると若干ターンOFFが改善するようなのでテストしてみる
R2=10kΩ、Vin=5V、Vout=18V。黄色が入力。水色が出力。ターンOFFは余り変わらずターンONが遅くなる副作用の方が大きい。これもデータシートのグラフの通り
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R1=560Ω
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R1=2kΩ
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R1=4.7kΩ
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R1=10kΩ。僅かにターンOFFが早くなっている
耐圧の高いフォトカプラなのでVoutを100Vにしてみる
R1=1k、Vin=5V。スライダックを使った絶縁されていない電源なので入力側は安全のため表示しない(入力側が絶縁されているので理論上は問題ない)。デューティー50%なのでカーソルのある位置でLEDをOFFしている。周波数は500Hz。22kΩに100Vの電圧がかかると発熱は0.45W。常時ONだとこれだけ発熱するので1/4W抵抗では持たない。電圧が高いと完全にOFFするまで約0.75msecと非常に低速になる
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R2=100kΩ
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R2=47kΩ
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R2=33kΩ
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R2=22kΩ