スピコン自作

最大10Aクラスのスピコンを制作します。入手難のFETを海外から購入すれば性能の良い物が出来ますが、安く作ることを目的とするので秋葉原で入手できる部品のみを使用します。


2007-12-16

先ずはブレッドボードで実験です

PICT6037.jpg

回路図はこんなです。半導体部品は秋月電子で購入できる物を使用しています。通常、FETはNチャネルMOSFETを使用しますが、ON抵抗の小さい小型の物が秋月電子になかったので面実装タイプのPチャネルMOSFETを使用しました。実験して性能が悪ければ交換しますが、ON抵抗はデータシート上で10mΩとなっているのでたぶん大丈夫です。この回路でうまくいけば部品代は¥500程度で済みます。

GP2が電池電圧を検知する仕組みです。A/Dコンバータを使います。
GP1はモーターの制御です。
GP0が受信機からスロットルの開度の信号を受け取る受け口です。

jikkenkairo.GIF

受信機->サーボへの信号を調べました。信号間隔は23msなので1秒に50パルス。

PICT6060.jpg

上の写真の1パルスを10倍した物。スロットル位置でパルスの幅が変わります。この幅の変化を捉えてモーターの出力を制御します。

PICT6064.jpg

スロットルOFFの状態

PICT6065.jpg

フルスロットルの状態

8ピンのPICでも、割り込みやタイマーの機能は充実しています。

PICT6069.jpg

プログラムのバグ取りは変数の値をPICに内蔵のEEPROMに書き込んで確認します。アセンブラだと面倒なのですが、BASICだと数行のバグ取り用プログラムを書けば済みます。デバッガの使い方を覚えるより簡単なのと、PICの種類を選ばないのでこの方法を多用しています。

PICT6070.jpg

ちょっと脇道にそれて、入手できる低ON抵抗のFETを調べてみました。耐圧は24Vとちょっと低いのですが抵抗値は0.8mΩしかありません。このFETが1個3ドル程度で買えます。10×10mm程度の大きさなので、定格いっぱいの429アンペア流すのは無理みたいです。昔、スピコンはかなり高かったように思いますが、FETの性能向上と低価格化がスピコンの低価格化に貢献しているのかもしれません。

PICT6071.jpg

プログラムを書き込んで動かしたが、なかなか思い通りに動いていくれない。原因はサーボの消費電力のために電源ラインが不安定になっているためだった。電源を強化して(配線の本数を増やしただけ)問題解決。ソフトのロジックを疑っていたため解決に2日を要してしまった。あと少しでプログラム第1版が完成する。

PICT6074.jpg

longint型の割り算をしたらあっという間にROMを使い切った。mikroBASICであまり気を使わずにプログラミングできる最小ROMサイズは2kワード程度のようだ。PIC12F675は1kワードのROMしか無い。

PICT6075.jpg

MikroBASICは else if 構文がないので強引に書くと end if が並んで不細工。

PICT6076.jpg

途中ショートさせたまま動かしたため、どこからか煙が出ましたが、動くレベルの物になりました。過電流は5A程度だったのでFETは死にませんでした。どこが燃えたのかよくわかりません。まだ、フルスロットルの境目と、モーターOFFの境目で息つきがあるので、スロットルにヒステリシスを持たせないとダメみたい。ここまでに作り込んだ機能は
 1.バッテリーをつないだ直後はモーターが回らないようにする
 2.バッテリーをつないだ後にスロットルをFULLの位置にするとモーターがピッピッピッと鳴る
 3.スロットルを一旦OFFの位置にしないとスタートしない
 4.バッテリーの電圧が6.2V以下になるとモーターが止まる
 5.バッテリーの電圧低下でモーターがOFFすると、その後、電圧が回復してもスロットルをOFFの位置にしないと再度モーターが回らない

PICT6080.jpg

割り込みルーチンでPWMの制御と受信機からくるパルス幅の計測を順番に処理しているためモーターのPWM波形をオシロスコープで見ると、シャキッとしていない。PWMは約3kHzだが、受信機からくるパルスは43Hzしかない。

PWM波形
ファイル ファイルタイプ 添付ファイルの解説
furatuki.wmv MOVIE MOVIE(アセンブラで書けばもうちょっとましになると思うが、この程度の揺らぎは人間にはわからない)

ブレッドボードでは流せる電流が限られるので、ソフトが完成したら試作品を作ります。その前にICSPが出来るか確認。DIPサイズならソケットが使えるので問題ありませんが、SOICパッケージではICSP出来ないとお手上げになります。このスピコンは電池電圧をA/Dコンバータで検知しているのでどんな電池にもソフト次第で対応できます。まだ作り込んでいませんがセル数もソフト次第で自動判断できます。
市販のアンプに「リポ対応」というのがありますが、リポにも対応できるのか、リポ専用なのかよくわかりません。専用と対応は全く違う言葉ですが、同じ意味で使われることがあるので困ります。その昔、「PC98対応」というWindowsがありました、これはPC98専用の意味でした。Microsoftのような大手企業でも「対応」という言葉を誤用しています。

PICT6081.jpg

基板のパターンを作りました。両面基板に面実装部品の組み合わせです。スルーホール部品は一切使っていません。サイズは25×15mm。サイズは一回り大きくなります。

PICT6086.jpg
PICT6087.jpg

100×75mmの基板から20個も取れます。

PICT6088.jpg

感光剤が変わったようです。注意書きに「現像不足、オーバー」とありますが、現像不足が「露光アンダー」の意味だとするとどう変わったのかよくわかりません。具体的な露光時間目安が提示されているのですが、今までの物より露光時間を多くしないといけないのか少なくしないといけないのかが判らないので、実験してみるしかありません

PICT6089.jpg
PICT6090.jpg

両面基板は生基板にセロハンテープでマスクパターンを貼り付けた後、それをガイドにして露光します。うまく現像できたように見えるのですが...

PICT6092.jpg
PICT6095.jpg

露光オーバーです。ブツブツが出てしまいました。感光剤も弱くなったような気がします。エッチング中にだいぶ傷が付きました。

PICT6101.jpg
PICT6097.jpg

プログラムの書き込み。

PICT6103.jpg

チップ抵抗がなかったので一部1/6Wのカーボンフィルム抵抗を使ってます。

PICT6110.jpg
PICT6108.jpg

組立中に2カ所パターンの問題を発見。1カ所は電源レギュレターの下にビアが出来てしまっています。基板メーカーに作ってもらうのであれば問題ありませんが、自作の両面基板はビアの部分が出っ張ってしまうため不可です。もう一カ所はFETのドレインとソースが繋がってしまっています。この部分は手動配線したので、その時のミスです。

PICT6120.jpg
PICT6121.jpg

消費電力の計測

PICT6116.jpg
BEC消費電力
ファイル ファイルタイプ 添付ファイルの解説
sabo2ko.wmv MOVIE 2個を同時に動かしています。アナログメーターのため応答性が悪いので瞬間的には1A程度流れていると思います

電源ICの定格は出力0.5A、最大瞬間出力1.2Aなので同時にサーボ2個を動かすのが限界です。限界を超えると電流が頭打ちになるのでサーボのトルクが小さくなるだけで動かなくなるわけではありません。但し、常に激しく動かすと電源ICが発熱(125度までOK たぶん)して停止します。このときは受信機にも電源供給されないのでノーコンになります。これはICそのものの機能なので市販品でも同じです。

静止状態でフルスロットルにするとモーターが傷むので代わりに抵抗を使って動作確認。電流は4.5A程度流れていますが、この程度だとFETはちょっと生暖かくなるくらいです。7~8A流すならヒートシンクが必要になりそうです。

PICT6112.jpg
PICT6114.jpg
BEC消費電力
ファイル ファイルタイプ 添付ファイルの解説
arufaban.wmv MOVIE 初期設定と動作の様子。スロットル設定時に長めにモーターをONしているので、プロペラが回っていますが、ON時間を短くすれば鳴るだけになります。

電流を多く流すので基板のパターンの電気抵抗も無視できません。基板設計の目安は「パターン幅1mmで1AまでOK」ですが、計算してみました。
銅の電気抵抗は 1.72μΩcm「角砂糖サイズの銅のサイコロの両端の抵抗値」 なのでプリント基板のパターンの幅に換算すると...
銅箔の厚さ0.035mm(普通のプリント基板の銅の厚さ)、幅1mm、長さ10mmなら 1.72 × 100 ÷ 0.035 = 4.9mΩ となります。これを基準として長さが2倍になれば抵抗値は2倍になりますし、幅が2倍になれば抵抗値は半分になります。幅3mm、長さ30mmのパターンの抵抗値は 4.9×3÷3=4.9mΩとなりFETのON抵抗値並の値になり無視できません。

基板のパターンを見直しました。パターンの最小幅は3.3mmです。横方向の長さは23mmですが、プラス側の経路とマイナス側の経路があるため約46mmになります。抵抗値は 4.9×4.6÷3.3=6.8mΩとなります。ON抵抗の小さなFETを使用しても基板のパターンが間抜けだとダメってことのようです。プリント基板の銅箔の厚みは通常0.035mですが、0.07mの物もあります。メーカー製は厚いのを使っているのでしょうか? 10Aまでいける物にしようと思いましたが、ヒートシンク無しでは5A程度が限界です。ユニオンモデルの280モーターはちょっと荷が重すぎます。
ビア(基板の表面と裏面をつなぐ緑色の物)もちょっと大きくしたので表面と裏面のパターンズレの許容範囲も大きくなります。

PICT6140.jpg
PICT6142.jpg

見直した回路図です。抵抗値も変えたのでソフトも変更する必要があります。R2,R3,R5の抵抗値は「大体こんなもんかな~」で決めています。チップ抵抗を何種類も買うのは無駄なので、抵抗値をそろえてあります。3セルのリチウムポリマー電池を使わないならR1も1kΩにできます。

supikondip.GIF

殆どの部品が1個単位で購入できないので1個だけ作ろうとするとかえって市販品より高くなります。余る部品の価格を無視すれば1個¥300ちょっとで済みます。「1個価格」はスピコンを1個作るのに必要な部品の値段です。それにしても大容量のチップコンデンサというのは高い。

buhinhyo.PNG

FETを4個にしてみた。これなら10Aいけるかも。横方向に1cm長くなったが、この大きさなら機体に積み込むのに苦労しない。1個¥20のFETなので¥40増で済んでしまう。

PICT6144.jpg
PICT6148.jpg

2007-12-27

もうちょっと大きい物を作ってみました。今度は全部リードタイプの部品です。最初はこんなレイアウトにしようと思いましたが機体に積みにくそうなのでボツ。

PICT6124.jpg

小型の機体には積めません。市販品より大きな部品を使っていますがひどく重いと言うほどでもありません。TO-220パッケージは足がICピッチで並んでいるので、大電流を流すためのパターンに出来ません。足を大きく広げればいいのですが、基板上の専有面積が大きくなってしまいます。

PICT6128.jpg
PICT6129.jpg

回路に2カ所間違いがあって修正が入りました。動作がちょっと不安定です最スローの時にモーターが完全にOFFになりません。ソフトは上で作った物と全く同じなのに何故でしょう?

PICT6131.jpg
PICT6132.jpg
動きがおかしい
ファイル ファイルタイプ 添付ファイルの解説
pikupiku.wmv MOVIE 最スローでOFFにならない

回路図です。PICで直接FETのゲートをコントロールする方が回路がシンプルになりますが、この回路の方がゲートを電源電圧(=電池電圧)まで上げられるためON抵抗を小さくできるメリットがあります。トランジスターを2個も使っているのは、上のスピコンとソフトを同じにするためです。専用のソフトを使うならR7,R8、Q2は不要です。R5は実験のために入れてある物なので無くても動きます。

kairosupikonbeta.GIF

2009-12-29

2年間放置していた作業を再開。回路図を見直した。MOSFETのゲート容量は10000pFにもなるのでプッシュプル回路でFETを駆動。秋月電子で販売終了した部品などもあり変更を加えた。

kairozu01.PNG

こんな本も見てみたが複数の記事の寄せ集めなのでネット上にある情報と大差ない。書籍はやはり体系立てて説明されていないと価値が低い。
ルネサステクノロジーのパワーMOSFETアプリケーションノートは数あるアプリケーションノートの中でも最も充実している。ネット上にあるので読んでみると良い。モーター回している人は必読。

PICT1344.jpg

トラ技スペシャル No98

PICT1343.jpg

ネット上にあるルネサステクノロジーの パワーMOSFETアプリケーションノート(<-この名前で検索するとHITするので見てみよう)55ページもある力作。

FETを4連装。裏面にはPIC等の制御回路がある。

PICT1346.jpg

基板のパターン

面付図は今まで発注した中で最も複雑。基板のサイズは16×33mmだが、OLIMEXで作れる最小基板サイズは20×20なので20×33で作っておく。余計な4mm分は自分で切り落とす。

pane.PNG

2010-02-02

基板が届いたので組み立てた。OLIMEXは20×20mmより小さい基板を切断できないので不必要に大きい。余分な箇所はフライス盤で削り落とす予定。

PICT1608.jpg

4連装のFET

PICT1607.jpg

5VBEC用電源とFETの制御回路